ハッピー・ピッグ・プロジェクト
Our Story
happy pig project(ハッピー・ピッグ・プロジェクト)は、「すべての豚にしあわせを」を合言葉に、豚の飼育・革のサステナブルな使い方を提案。豚の月産消費量である100万頭のうち1%以上が「ストレスフリーな環境」で育てられ、そのお肉や革が適切に私たちに届くシステムづくりを目指して、活動をしています。
沿革
日本国内の養豚数は、毎月100万頭に上ります。 全国200カ所に及ぶ食肉加工場から食肉業者を経て、重要な動物性たんぱく源である豚肉として私たちの食卓に並びます。 沖縄県など一部の地域では肉と一緒に皮も食する調理法もありますが、全国的には肉や脂と皮はほぼ分別されて流通します。 結果として、日本の養豚から供せられる豚原皮は毎月100万枚におよび、殆どが「なめし」加工によって豚革となり、靴やバッグなどの素材として世界中で使用されています。
この豚原皮は、利活用しなければ食肉文化から出る産業廃棄物となってしまうため、皮革なめし業は重要な国内産業として位置づけられて来ました。 最盛期には東京都墨田区内だけでも100社におよぶ豚革なめし工場や二次加工所が、毎月60万枚近くを生産していました。 しかし主たる用途であった靴の国内製造が大幅に縮小したため、2020年時では稼働工場は10社以下に激減し、その生産数は全社を合わせても月産で1万枚に満たないほどに国内の豚なめし産業は縮小してしまいました。
一方、世界に目を向けると、肉と一緒に皮を食する習慣の国や地域も多く、実は豚革は珍重されており、また高度な技術できれいに剥皮された豚原皮を有する国が少ないことから、日本の豚原皮(塩蔵することで生の状態でも常温で数か月の保管に耐えられる状態にしたもの)は世界中のタンナー、特に近隣のアジア圏では需要の高い原料皮となっています。
資源の少ない日本国から、自国で産出される優れた資源である豚原皮がそのまま安価で流出してしまっていることは非常に残念でなりません。 同時に自国内で構築可能な食と衣を通じた循環型社会の崩壊により、余分な輸送CO2の排出や、塩蔵皮から塩分を除く際の大量の水使用は、自然と環境に余分な負荷をかけてしまっています。
国内でなめし加工をする場合には、塩蔵せずその日の内に食肉加工所から生の状態でなめし工場に運ぶことも可能です。 例えば、輸入靴の1%だけでも国内生産に戻すことが出来たならば、どれだけのエネルギー消費を削減し、どれだけの町工場が事業を継続することができるでしょう。
もちろん、闇雲に生産を国内に戻せば良い訳ではありません。 昨今、EU諸国を中心に天然皮革の原料調達に際する動物福祉への配慮とトレサビリティの顕在化(製品がいつ・どこで・誰によって作られたかを明らかにする)が要求されています。 大小新旧に関わらず、事業として皮革産業に携わる全てのサプライチェーン(原料の調達から消費者に渡るまで)に於いて、公平・公正な取引形態を守り、安全で安心な商品の提供と環境への配慮はもとより、動物福祉に配慮した原料調達そしてそれに由来する皮革素材と製品化は、もはや企業の社会的評価のための加点のための取組みではなく新たな消費行動基準となりました。 ハッピー・ピッグ・プロジェクトは、私たちの食肉文化の副産物である豚皮の持続的な活用と、頂いた命の皮を大切に最後の1枚まで使い切るために、養豚・と畜・流通・加工・消費において私たちが出来ること、為さねばならないことを考え行動をして行きます。
アニマルウェルフェアという
考え方
「フリーストール」という言葉を知っていますか?
日本では、豚をはじめとする家畜の飼育について、十分な運動ができるスペースの確保といった、ストレスのない環境づくりに関する法規制などはありません。そのため、たとえば妊娠している母豚は、「子どもを踏みつけるかもしれない」「暴力的になるから」といった理由で、ストール(檻)に閉じ込められ、身動きができない状況に置かれています。その割合は、日本では9割近くにも上ります。
ストレスのたまる環境で育つ豚は、他の豚を傷つけたり、尾や尻尾をかむなどの自傷・他傷行為に走ることがあります。その結果、傷がついた豚の革は、なめしても傷が残ってしまい、革としての価値も下がってしまっているのが現状です。
モノづくりにおける動物福祉・アニマルウェルフェアの意味
日本と異なり、欧米では動物福祉の観点から、豚の飼育は厳しく管理されています。EUではイギリスから始まり、動物福祉は動物衛生、食品の質と安全、人間の健康、環境とのつながりが強く意識され、科学データに基づく規制が行われています。2009 年には基本条約(EU 機能条約)にも動物福祉の尊重が盛り込まれ、動物福祉に反した産品が制御されるようになりつつあります。EU議会では2021年6月、2027年までにケージ飼育を撤廃することを決議しました。 豚革の評価も人気も高いヨーロッパのハイブランド企業は、豚の飼育環境に配慮された革を調達し、鞄や靴などの製品作りに使っています。
アニマルウェルフェアの意識が浸透しつつある欧米と異なり、日本では、動物福祉に配慮した飼育に関する規制がないために、ストレスのない環境で育てられた豚の革の流通は非常に限られています。月産100万頭分と言われている豚革の中で、アニマルウェルフェアに配慮して育てられた豚が占める割合は極めて少ないのが現状です。しかし最近では、持続可能な開発目標(SDGs)への関心の高まりに伴う、原材料の調達への配慮の重要性が認識されるようになりつつあります。
現在の豚が置かれている状況を変えるためには、より多くの畜産農家の方、そして皮革から靴や鞄、衣類、家具、日用品、文具などを作り出す多くの企業や団体の方が動物福祉に配慮した革を選択し、製品にすることが必要です。
そして同時に、このことは食肉文化についても言えます。ストレスのない環境で大切に育てられた豚の命をいただくこと。このことは飽食の時代である現代、改めて「真のいただきます」の意味を見直すきっかけでもあります。
私たちの活動
豚のストレスを軽減するための活動
「ハッピー・ピッグ・プロジェクト実行委員会」
私たちが目指すのは、檻に身動きできないように閉じ込められることなく、その動物の習性に適した環境で育てられ、“動物としての幸せ”に配慮した飼育環境で育った原料皮を使用することです。
しかし、そのためには広い土地や設備への沢山の投資が必要です。 無理だと諦めるのではなく、一歩ずつでも動物の過ごしやすい環境に近づけるために、豚に遊び道具を与えたり、快適な音楽を豚舎そして食肉加工所で流すことで一匹一頭の豚のストレス軽減に役立ちたいと、皮革関係者に加えて、養豚場・食肉加工所や遊具開発者などと共に研究会を設けて活動をしています。
消費者と共に実施する活動
「Leave No One Behind」
NPO法人しんせい様と共に、一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク様の主催する「SDGsバッチ」を共同開発しました。
ラセッテーなめしで作られた豚革をベースに、ブラザーミシン社の協力によりSDGsのイメージカラー17色の糸で華やかにかたどられています。
SDGs市民社会ネットワーク会員団体や企業始め、一般の消費者の方も身に着けることが出来るSDGsバッチを通じて「Leave No One Behind 誰一人置き去りにしない」想いを伝える活動に参画しています。
JVCケンウッド社との共創
KooNe(クーネ)
JVCケンウッド社のKooNe(クーネ)空間音局システムを設置し、千葉県旭市の千葉県立旭農業高等学校の全面的な協力を得て「人と同じく、豚にも癒しの空間音響を提案できないか」と、豚のストレス軽減を実地検証しました。(2022年~2023年)
蟹江杏さんによる
ハッピー・ピッグのイメージ・アートディレクション
NPO法人3.11こども文庫理事長でもある作家・蟹江杏さんのご協力で、ハッピー・ピッグ・プロジェクトの絵葉書を作成し、クラウド・ファンディングや工場見学会などで配布しました。
作・蟹江杏
ハッピー・ピッグ・プロジェクトの
目標
2030年までに10%の達成
(ストレスフリーの養豚数、豚革の生産と製品化)